むちうち

【むちうちとは】

頭が激しく動かされ、首がムチのようにしなることで発症する外傷を「むちうち」といいます。
むちうちはケガが起きた経緯をあらわす言葉であり、正式な負傷名ではありません。
正式には「外傷性頸部症候群」「頚椎捻挫」「頸部挫傷」などと呼ばれています。

【むちうちのおもな原因】

●交通事故

むちうちは、交通事故時の発生が多くなっています。
後方や側方から追突され、頭が激しく揺さぶられることで、頸部周辺の組織を負傷してしまうのです。
また、事故による転倒によっても、首を強くひねってしまう場合があります。

・むちうちのメカニズム

不意に後方から追突された際、頭が後ろに勢いよく振られます。
その反動で、今度は正常の可動域を超えて、首が強く前屈してしまいます。

すると、首まわりの筋肉や靭帯が引き伸ばされ、むちうちが生じると考えられます。
また側方からの衝撃で、横に頭が振られるむちうちもあります。

・軽度の事故でもむちうちになる可能性はある

軽く接触した程度の事故でも、むちうちになる可能性は十分にあります。
シートベルトで胴体は固定できても、首までは保護できていません。
そのため、ささいな衝突に思えても、頸部周辺の筋肉や靭帯などに負荷が加わり、負傷してしまう場合があるのです。

●スポーツ

ラグビーやアメフトなど、選手同士の激しい衝突によって、首に強い負荷が加わることがあります。
また、スキーやスケートといったウインタースポーツで勢いよく転倒して、むちうちになるケースもあります。

●転倒、衝突

「濡れた床に足を滑らせ、尻もちをつく」「出会い頭に人と衝突する」「ジェットコースターで急発進する」
など、日常生活中にも、むちうちになるシーンがあります。

特に運動不足や長時間の同じ姿勢などで、首の柔軟性が低下していると、同じ衝撃でもむちうちが発症しやすくなります。

【むちうちの種類】

●頚椎捻挫型

むちうちの多くが、「頚椎捻挫」といわれています。
首がムチのようにしなることで、首まわりの筋肉や靭帯を負傷してしまうのです。
頚椎捻挫のおもな症状には、次のものが挙げられます。
・首の痛み
・首の可動域制限（上や下を向きづらい、後ろを振り向けないなど）
・首や背中のハリ感

また、首まわりの緊張が強まり、頭部への血流が悪化することで、緊張型頭痛やめまいなどを起こす場合もあります。

負傷直後は特に自覚症状がなくても、数時間〜数日経ってから痛みを感じ始めることが、むちうちの特徴の一つです。
事故に遭ったというショックで脳が興奮状態になることが、痛みを感じにくい原因に考えられます。
アドレナリンが大量に分泌され、痛みが一時的に抑えられてしまうのです。

加えて、頚椎捻挫以外にも、次のような症状が併発することもあります。

●神経根損傷型

内出血による腫れや頚椎のゆがみなどで、末梢神経の根元が圧迫されたものです。
感覚神経や運動神経が圧迫されることで、腕のしびれ・放散痛・力の入りにくさなどを生じる場合があります。

●脊髄症状型

首への激しい衝撃で、頸髄を損傷したものです。
手や足のしびれ、知覚異常などがおもな症状になります。

●バレーリュー症候群型

自律神経の中の「交感神経（日中の活動時に働く神経）」が刺激され、さまざまな不調を起こしたものと考えられています。
自律神経の乱れによって、次のような症状がみられることがあります。

・頭痛
・吐き気
・不眠（交感神経が優位になり、眠れないもしくは眠りが浅くなる）
・耳鳴り
・眼精疲労
などです。

●脳脊髄液減少症

脳や脊髄を包んでいる硬膜が破れて、脳脊髄液が漏れ出たものになります。
脳や脊髄への内圧が減少することで、次のような不調を生じることがあります。

・起立性の頭痛
・めまい
・倦怠感
・視力の低下
などです。

むちうちが疑われる場合は、次のような対処を行いましょう。

【急性期の対処法】

●安静

痛めた直後は、患部をなるべく安静にしてください。
無理に動かしていると、靭帯や筋肉などの損傷を悪化させる可能性があります。
また首の痛みが強い場合は、頚椎カラーの着用によって、患部への負担を軽減できることがあります。

●冷やす

炎症で熱っぽさを感じる場合は、患部を冷却しましょう。
アイスノンや氷水の入った袋をタオルで包み、痛みのある箇所に当てて冷やします。

しかし、血行を悪化させる可能性があるため、冷やし過ぎには十分お気をつけください。
冷却は、痛みや熱っぽさが強い時期だけに限るようにしましょう。

●医療機関に相談する

消炎鎮痛剤が含まれた湿布や痛み止めの薬が有効な場合もあります。
「痛みが強くて眠れない」「痛みで日常生活に支障が出る」といった場合は、一度医療機関に相談してみてください。
※自賠責保険の問題もあるため、自覚症状がなくとも、交通事故時は早めに医療機関に行くことをおすすめしています。

【慢性期の対処法】

●温める

受傷から10～14日を目安に、今度は患部を温めるようにしましょう。
ホットパックや蒸しタオルなどを当てて、首から背中、肩まわりを温めていきます。
温めることで血流が促され、損傷した組織に酸素や栄養素が運搬されやすくなります。

しかし、症状によっては温めない方がいい場合もあります。
状態が悪化する場合は、温めることを控えるようにしましょう。

●安静期間を過ぎたら積極的にストレッチを行う

熱感や強い痛みがひいてきたら、今度はストレッチで患部の柔軟性を高めていきましょう。
むちうちの場合は、首や肩まわりを重点的に伸ばすことがおすすめです。
無理はせず、お風呂上がりなど身体が温まったタイミングで行いましょう。

・首のストレッチ

頭を左右や前後に倒し、首まわりの筋肉をゆっくりと伸ばします。

・肩まわりのストレッチ

指を組んだ状態で両腕を前方に伸ばし、背中の筋肉をストレッチします。
また、反対に両腕を後ろに引いて、肩甲骨を内側に寄せるストレッチ方法もあります。

●整骨院に行く

慢性期では、整骨院の施術によって症状の早期改善を図れます。
手技や電気などで血流を促し、治癒力を高めていきます。

当院では、むちうちについて、初期・中期・後期と段階を分けて考えております。

初期では炎症や筋肉の緊張が強い時期になりますので、マイクロカレント(微弱電流)やアイシングを中心に行い症状の経過をおいます。

中期には炎症が徐々に改善している頃になるので、それに合わせ少しずつ温熱療法へ切り替え、患部へ血行促進程度のマッサージを行います。

後期に入ってくると炎症はなくなっていくのですが、組織が硬くなりやすくなっている時期なので、患部へストレッチなどの運動療法を行います。

当院ではマッサージだけでなく、ストレッチなどの運動を取り入れることで予後の経過が大きく違ってくるのは明らかですので、積極的に行っております。